2018/01/01
何度となく世界が終わる、と呟いた。世界の終わりを信じた。世界の終わりを、続くこの世界で飽くことなく歌うロックバンドみたいに。世界は終わっていない。
年の明けを跨いだ掃除を終えたあと、ベランダに出て煙草を吸いながら、風の音が聴こえる静かな夜を見ていた。かすかに洩れる光が、隣人もまだ起きていることを伝えていて、壁やベランダ越しに時々聞こえてくる割れ鐘を叩いたように濁った声は、きっとぼくがこの先、詩や小説の傑作を書いても彼が読むことはたぶん永久にないだろうことを分からせる。
ぼくが安易に想像するような「世界の終わり」なんてない。
2017年を顧みて、夏がもっとも輝かしい時代だった。友人たちの住む地を肌でたしかめることを口実に北海道、静岡へと足を運んで、それぞれとてもたのしい時間を過ごした。ありがとう。いつ死んでもいいように、と巡礼のつもりで出発したのに、帰ってからまた行きたい、彼らに会いたいと思ってしまった。だからYくんへ。そのうち冬の北国へ行く。ぼくがただ広い道路におどろいているとき、きみが除雪車が通るからね、と言った瞬間に現前した、降雪の世界を生活するひととのリアリティの差を確かめる為に。そして降雪した朝のしずけさをこの耳で聴きたいから。
以下は2017年に読んだ本のうち良かったもの。再読含む。順番は適当。
精霊の息吹く丘(モーリス・バレス 中央公論新社)
失われた時を求めて 9巻(マルセル・プルースト ちくま文庫)
アメリカン・サイコ(ブレット・イーストン・エリス 角川文庫)
ブギー・ポップ・イン・ザ・ミラー「パンドラ」(上遠野浩平 電撃文庫)
ひかりの途上で(峯澤典子 七月堂)
灰と家(鈴木一平 いぬのせなか座)
天使(佐藤亜紀 文春文庫)
読書は読むペースそのものが少し早くなった気がする。尤も、難解な厚い哲学書を手に取るような根気はなくなってしまったけれど。
音楽。後半にゆくにつれてあまり熱心に聴かなくなってしまったが(Syrup16gだけリピートしていた時期が長すぎた)、良かったアルバムを五つ挙げる。
ショパン&リスト:ピアノ協奏曲第1番(クラウディオ・アバド(指揮) マルタ・アルゲリッチ(ピアノ))
ハイファイ新書(相対性理論)
delaidback(Syrup16g)
All The People:Blur Live At Hyde Park(Blur)
新しき日本語ロックの道と光(サンボマスター)
映画。割とひつように迫られて、とか話題なので、とかの理由で漫然と観たり、途中で観るのが嫌になったりして映画をたのしむ才能がないことを何度も痛感したが、面白かったものは文句なく面白かった。五つ挙げる。
創作。去年の夏ごろから取材を重ねて準備していた、響け! ユーフォニアムの二次創作を書くことを通じて、課題を排出しながらも、かつてよりも良い手応えを感じて散文のリハビリが出来た。悪くない、と思う。音楽にかんしては殆ど無知同然の位置から、プレイヤー達に取材をしたり文献を読んだりして、音楽を奏でる側の世界にすこしでも肉薄できれば、と希望しながら書いた。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8420402 (リンク先はPixivのページ)
詩にかんしては今年の三月に「礼儀」という詩を書けたことがおおきい。以後の、自分のなかで推敲するに値すると判断する際の、詩行の運びのリズム、緊迫感はこの詩の以前以後でかなり分かれていると言える。
https://www.dropbox.com/s/kwzsr57b9x6zwbx/%E7%A4%BC%E5%84%80.pdf?dl=0 (Dropbox)
2018年はもっと言葉を無理にでも量産して、嫌でも質の向上を目指したい。当面の目標は詩誌に投稿して入選することになる。何だかテストで高得点獲って高偏差値を取る、みたいな目標だが。
散文のほうは現在構想中の小説を書いて賞に提出すること、これ以外にない。
多くの希望や願いや楽観が、まいにち陶器のようにあっけなく砕かれている世界で、ぼくはまだ実りへの希望を捨てきれないでいる。
- アーティスト: アルゲリッチ(マルタ),ショパン,リスト,アバド(クラウディオ),ロンドン交響楽団
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1998/05/13
- メディア: CD
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